それは、長い間、広島県の県議、市議、首長たちは、当然ながら、溝手氏のための選挙活動をしていて、そうした広島県の有力者たちを、強引に溝手議員から河井氏側に切り替えさせなければならなかったからだ。

 おそらく、案里氏のほうが望ましいと判断して切り替えた有力者は、ほとんどいなかったのではないか。

 溝手議員のために選挙活動をしていた有力者たちを、案里氏側に強引に切り替えさせるためには、夫の克行氏もフル活動したに違いない。

 そして、そのためには多額の資金を必要としたのであろう。

 おそらく、少なからぬ現金を受け取った有力者たちが、それを受け取らないと自分の将来が危ない、と感じて、やむなく受け取ったのではないだろうか。強引に渡されながら、受け取るのを拒否した人物が何人もいるようだ。

 こうなると、河井夫妻の立件だけでは済まされない。

 当然ながら、案里氏を強引に当選させるために1億5千万円を提供した自民党総裁・安倍晋三氏の責任が問われることになる。

週刊朝日  2020年7月10日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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