帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
もう一つ先に希望を持とう (GettyImages)
もう一つ先に希望を持とう (GettyImages)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「もう一つ先の希望」。

*  *  *

【ポイント】
(1)がんが治ったら何をするかを問う
(2)治すことでなく、その先に希望を見いだす
(3)死についても、その先の希望を見いだす

 がん患者さんが語り合う会でのことです。末期がんでギリギリのところまでいって生還した患者さんが、ご自身の体験を話してくれました。そのなかで彼はこう言うのです。

「先生のあのひと言で私の人生は変わりました」

 ところが本当に申し訳ないことに、私は何を話したのか覚えていません。私にとっては普通のひと言だったのかもしれません。

 彼によると、私はこう質問したのだそうです。

「ところで、がんが治って何をするのですか」

 それを聞いてはっとしたと言います。

「そのときは、そんなことはまるで考えてもいませんでした。とにかく、がんを治すことで頭がいっぱいだったのです」

 がんと診断されると、ほとんどの人は「どうやって治すか」に一生懸命になります。手術、抗がん剤はどうするか、再発を防止するにはどうしたらいいかなどなど、治すことを目標に設定して、それに翻弄(ほんろう)されます。しかし、治すことばかりに目がいってしまうと、思考の範囲が狭くなってしまい、「今のままの治療法で本当にいいのだろうか」などと治療への不安ばかりが募ってしまいます。

 治すということをゴールにするのでなく、もう一つ先に希望を見いだすことが大事です。

 治療が終わったら、こうしよう、ああしようということをイメージするのです。そういう自分の姿を思い浮かべることができれば、私がいつも自然治癒力にとって大事だと強調している「心のときめき」を生み出す余裕も生まれてきます。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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