「安易な放出などせず、陸上での保管を続け、その間にトリチウム除去技術の開発を進めるべきです」(発議者の高野武町議)

 国連特別報告者も6月9日、「有意義な協議がないまま海洋放出を急ぐ日本政府の姿勢には大変憂慮している」とする声明を出し、放出は「漁業関係者だけでなく、海外の人たちにも深刻な影響を与える」とした。

 こうした事態を受け、経産省は一般からの意見募集(パブリックコメント)期間を2度延長し、7月15日までとした。だが、方向性が変わる兆しは見えない。

「今までに集まった2200件以上の意見には海洋放出に反対する内容も多い。ですが、反対が多ければ選択肢を見直すのかと言われると何とも言えません」(同省廃炉・汚染水対策チーム)

 脱原発社会の実現を目指す市民団体の原子力市民委員会で委員を務める伴英幸氏は、国は放出ありきの議論をしていると批判する。

「大型タンクでの長期保管やモルタルで固めて半地下で処分するなどいろいろな案が出ているのに、場所がないなどと言って真剣に考えようとしない。このままでは1200兆ベクレルにも上る膨大な放射性物質が環境中に捨てられることになってしまいます」

 国は今夏にも処理方法を決めると見られている。(桐島瞬)

週刊朝日  2020年7月3日号