教育の専門家たちは、保護者に対して「家庭では子どもを追い立てないでほしい」と口をそろえる。休校中は、友だちに会うことも外出も我慢した。生活のリズムは崩れ、体力も低下しているからだ。

 学校が再開したいまは、新しい教室で、新しい先生と友だちに囲まれている。楽しい半面、気を張った環境でストレスもたまる。

 学校も家庭でも追い詰められたら、逃げ場をなくしてしまう。

 親野さんが大事だと唱えるのは、子どもの顔や様子をよく観察すること、何か親に話をしようとしたら、まず共感してあげることだという。「大変だったね」「苦しいね」「それは困ったね」――。そう共感してあげると、子どもは、抱え込んでいることを少しずつでも打ち明けてくれる。

「子どもの口から話を聞き、親が状況を把握した段階で、対策を立てれば十分です」

 逆に絶対にしてはいけないのが、話をロクに聞かないうちに、「それはね」と的外れなアドバイスや、「頑張れ」と励ましをしてしまう行動だという。

 そうなったら最後、子どもは「この人は、わかってくれない」と心を閉ざしてしまう。

 ただ、子どもが宿題や片付けをしない、といった状態は困る。どうすべきか。

「一緒にやろう」と声をかけて、最初だけでも手伝ってあげるのがいい。「大人も同じですが、とっかかりは面倒くさいものです。いったん、手をつければ、人間はエンジンがかかります。とくにいまは、子どもの良い点をほめて極力、否定的な言葉を使わないことが大切です」(親野さん)

 清水教授もこう呼びかける。子どもの長い人生のなかで、「3カ月の休校」がその後に取り返しのつかなくなるようなことはない。大きく構えてほしいーー。 (本誌・永井貴子)

※週刊朝日オンライン限定記事