「子どもの様子がおかしい原因は、たいていは周囲の大人の精神状態が不安定だからです。コロナ禍で学校の先生も、親もイライラしている。子どもに対して在宅勤務のストレスのはけ口にしたり、減給や解雇を受けて怒りの矛先を向けたりと、実際に家庭で起こっていることも少なくないでしょう」

 まず、先生たちに心がけてほしいのは、「学校は楽しい」「授業や勉強は楽しい」「先生、大好き」と思えるようにしてあげることだという。先生たちは真面目なだけに、学習が遅れた分、児童や生徒たちに詰め込んで教えようとしてしまう。

「先生方が一番わかっていると思いますが、教科書の内容を全部やる必要はないんです。算数や英語、理科は蓄積が必要な教科ですが、国語や社会は、教え方を工夫すれば精選できる教科。長時間かけなくても済む分野はたくさんあります」。子どもはロボットではない。夏休みの大幅縮小や土日授業、1日7時間の授業などで詰め込まなくとも大丈夫だという。

 学校臨床学を専門とする日本女子大学の清水睦美教授も、学校に心がけてほしいのは「あわてない」「いそがない」「詰め込まない」の3点だと話す。

 清水教授は、東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市の中学校を8年間追跡調査した結果を『震災と学校のエスノグラフィー』の著書にまとめるなど、災害に直面した子どもたちの様子を、現場で見てきた。

「コロナ禍の休校によって、親は仕事をしにくくなったことで気づいたと思いますが、学校は勉強だけをする場所ではありません。親にとって学校は子どもを預ける場でもあったし、子どもにとって学校は、安心安全な環境で集団生活や多様性、適応することを学び、友だちと遊び、心身ともに成長する場所として機能していたのです」

 “9月入学論”も学校を勉強する場としか見ていないから、飛び出した議論だとも指摘する。「むしろ学校は、コロナ禍の分散登校で経験した20人程度の少人数学級を維持して、子どもたちを丁寧に指導すべきです。政府が予算をつけて新たに教員を採用したり、臨時の職員を増やしたりすることで、実現できます。雇用や経済の面からも、理にかなったやり方であると思います」(清水教授)

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まずは共感 的外れなアドバイスは最悪