6月19日に提供が始まった新型コロナウイルス接触確認アプリの画面(C)朝日新聞社
6月19日に提供が始まった新型コロナウイルス接触確認アプリの画面(C)朝日新聞社

 厚生労働省が6月19日に提供を始めた新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA(ココア)」。スマートフォンにインストールすれば、陽性者と濃厚接触した可能性がわかり、感染拡大の防止につながることが期待されるアプリだ。

 ただ、課題は多そうだ。英国のオックスフォード大の試算によると、人口の約6割に接触確認アプリが普及し、早期に濃厚接触者に通知できれば、ロックダウン(都市封鎖)をすることなく、第2波の感染拡大を抑えることができるという。ITジャーナリストの高橋暁子氏は、

「6割は非常に難しい」

 と見る。

「例えば、ラインは国内で8400万人くらいの利用者がいますが、厚労省がライン経由で健康状況などの調査を活用した際、2400万人程度の回答しか得られませんでした。すでに多くの人の手元にあるラインですらも、3分の1弱しか利用していなかった。それよりも少なくなると見ています」

 COCOAは、氏名や電話番号などの個人情報の入力は必要ないが、利用者数が伸びないとする分析が多くなされるのは、「個人情報抜き取りへの警戒感」が世間で根強いからと続ける。

「昨今、アプリを利用して個人情報を悪用されるケースが非常に多く、一からインストールとなると様子見したり、利用を控えたりする人が出てくるのは間違いないでしょう」

 アプリ開発で厚労省と連携する内閣官房IT総合戦略室の担当者はこう言う。

「スマホの保有率が6割ちょっとなので、ハードルは高いとは思っている。ただ、6割という数字が独り歩きしています。それはあくまでロックダウンが避けられる可能性があるという机上検討のものです。アプリはあくまで、個人の行動変容を意識づけ、医療機関へのアプローチの利便性を感じてもらえるかがポイント。このアプリによって緊急事態宣言を避けられるというところまでの話ではないと思っています。全体としての効果はやってみないとわからないというのが正直なところです」

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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