欧州GPはレース感覚を養うために日本選手も参加してきました。北島康介は北京五輪前年の2007年に3大会に出て、計6日間で20レース以上を泳ぎました。ウォーミングアップは15メートルのプールの会場があったり、レースの合間にウェートトレーニングをしながら出場する選手がいたり、きちんと調整をして臨む五輪や世界選手権とは違った雰囲気があって、選手が大きな刺激を受けます。いつか日本でもこういう大会を開けないか、という思いもありました。

「バルセロナ大会」にはリオ五輪金メダリストの萩野公介ら11人が参加。レースの直前は会場に音楽をかけて気持ちを盛り上げる演出をしました。私がマイクで選手紹介をして、スターターも務めました。これまで約2カ月かけて個々の泳ぎを細かく修正して、手応えはつかんでいます。この大会は「何秒出た」というよりも「何回出た」ということを重視して、何発もレースを泳ぐことで自分で課題を見つけてほしい。

 どの選手もレースに集中して、自分を追い込むことができていました。2週間弱の大会期間が終わったら、スピードを磨いていく練習に取り組み始めます。

 今はほんとうに閉塞(へいそく)感があって先が見えないけれど、大切なのは「できることを真剣にやる」ことです。できないことを数え上げると不平不満ばかりになってしまいます。できることに集中して前向きな気持ちを持ち続ければ、必ず次につながっていくはずです。

(構成/本誌・堀井正明)

週刊朝日  2020年6月26日号

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平井伯昌

平井伯昌

平井伯昌(ひらい・のりまさ)/東京五輪競泳日本代表ヘッドコーチ。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる』(小社刊)など著書多数

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