韓流ドラマは、実際に韓国で起こっている社会問題が色濃く反映される傾向も強い。例えば、「愛の不時着」でヒロインを演じたソン・イェジンが主演を務める「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」。「2018大韓民国コンテンツ大賞」大統領表彰を受賞するなど、大きな注目を集めた。

「ここまで話題になったのは、単なるラブコメではなく当時韓国でも社会問題になっていた『#MeTоо運動』を反映した作品だったから。セクハラ、パワハラ問題に鋭く切り込み、韓国が直面する問題を真摯に描いたことも高く評価されました」(成川さん)

「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」も、現実の社会問題を反映した作品。韓国でSKYといえばソウル大学、高麗大学、延世大学の3大名門大学のこと。大学入試をめぐり高校生とその親たちが繰り広げる受験戦争を描いたドラマで、現実社会の熾烈な受験競争とともに話題となり、異例のヒットを記録した。

「怒濤の展開で、毎回衝撃のラストシーン。ストーリーもさることながら、主役から脇役まで出演者全員の演技が光り、とにかく飽きさせません」(安部さん)

 話題作は若者を描いた作品ばかりではない。シニア世代にオススメなのが認知症を描いて話題になった「まぶしくて」。アナウンサーを目指す25歳の主人公が、ある事件をきっかけに突然70代のおばあさんになってしまうという筋書きで、主演は当時77歳のベテラン女優、キム・ヘジャ。

「キム・ヘジャの演技がとにかく圧巻。高齢の主人公で、ここまで視聴者を釘付けにできるドラマも珍しい。切ない描写に心揺さぶられます。最後にあっと言わせる設定が明らかになるので、ぜひ最終話まで観てほしい」(成川さん)

 ネットフリックスオリジナルの韓国ドラマも世界的な人気を博している。代表的なのが、「キングダム」と「人間レッスン」。「キングダム」は昨年、韓国初のネットフリックスオリジナルドラマとして配信され、圧倒的なスケールの“ゾンビ時代劇”として話題になった。4月から配信されている注目作「人間レッスン」は高校生の犯罪をテーマに描く。

「テレビでは放送されない作品なので、韓国ではこれらを見るためにネットフリックスに加入する人が多い。韓流ドラマが世界的コンテンツであることを実感します」(同)

 怒濤のごとく押し寄せる極上ドラマの数々。梅雨の“おうち時間”は、韓流ドラマの世界に浸ってみてはいかがだろう。(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2020年6月26日号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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