マンションの住民に感染者が出たとしても、保健所や地元自治体が管理組合に通知することはない。プライバシーや個人情報保護の壁が立ちはだかるためで、コロナ問題ではマンションの管理組合が助けにならない場合もある、と山本さんはみる。むしろ、コロナ感染のリスクから人を集めての理事会や総会を開けず、管理組合が事実上、機能しにくい面が多い。

 かりに感染者がマンション内で療養する場合、買い物は宅配を使って外出を避けられるものの、マンション特有の問題が浮上する。玄関先は共有部分となるため規約上、「置き配」はできない。今後は置き配を認めるケースが出てくるかもしれないが、管理組合での合意形成が前提となる。

 コロナ問題に最も積極的に取り組んでいるマンションだと、山本さんが評価する物件が都心近くにある。そこは大規模物件で住人も多く、管理組合と自治会がほぼ一緒。高齢者が多く、助け合いの意識が高いという。政府の緊急事態宣言を受けて対策本部を立ち上げた。注意事項の掲示や、手指洗浄液・消毒液の設置などを実施。感染者が出た場合は、管理組合に連絡をお願いして住民に通知。消毒業者を手配し、食料や日用品を届けるなど感染者や家族の生活を支援する体制を整えたという。

 エレベーターの感染予防対策については、関係メーカーなどもアドバイスしている。フジテックは自社のウェブサイトで、利用者が手で触れるボタンの消毒を勧めている。エレベーター内には換気扇か換気口が設置されている。日立ビルシステムは、エレベーター内でほかの人と距離を保ち、混雑している場合は乗車しないほか、会話を控えるようにと呼びかけている。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2020年6月26日号より抜粋