イラスト/和田慧子 (週刊朝日2020年6月26日号より)
イラスト/和田慧子 (週刊朝日2020年6月26日号より)

 体の老廃物を濾過(ろか)する「腎臓」は、人の老いに深くかかわっており、労わることで老化スピードを遅らせることができるという。

 東洋医学の「腎」から老化を見ていこう。何を隠そう、五臓六腑の一つである腎は、生きていくための生命力を指していて、成長や老化、生殖にもかかわっているのだ。

「東洋医学では、腎は腎臓としての機能だけでなく、骨や耳、目、髪なども支配している臓器です。年を取ると腰が曲がったり、白髪が増えたり、耳が遠くなったり、目がかすんだりしますが、これらはすべて腎の力が不足(虚)した『腎虚』という状態なのです」

 こう説明するのは、高齢者の漢方診療に詳しい野木病院(栃木県野木町)副院長で筑波大学附属病院臨床教授の加藤士郎医師だ。

 東洋医学では40歳ぐらいから老化、つまり腎虚が始まると考えられている。

「現代人は寿命が延びた分、老化とともに過ごす時間が増えました。老化はあらがえませんが、そのスピードを緩やかにすることはできます。大事なのは、そのためのスキルを身につけることです」

 その上で、提案するのは“養生”だ。養生とは、病気にかからないための生活の知恵のようなものだ。

 腎虚がある人に共通する不調の一つが、冷え性。女性に多い不調というイメージがあるが、腎虚がもたらす冷えは必ずしもそうとは限らない。

 実際、男性にも多いのが、年を取ってから下半身が冷えるケースだ。冷えがあると免疫力が低下する。風邪などの感染症にかかりやすくなったという人は、体が冷えている可能性大で、対策をとったほうがよい。

「腹巻きや靴下などで体を冷やさない工夫を。入浴も効果的です。運動ではウォーキングがいいですね。太ももの筋肉を動かすことで体内から熱を生むことができます。ウォーキングをする際はなるべく歩幅を広めにして歩きましょう」

 と加藤医師。夏は冷えないと思いがちだが、クーラーがついていると、意外と体は冷える。今の時期も対策は必要だ。

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