まだまだ道半ばで、それが自分の使命とまでは言えないが、俳優という仕事は夢や希望、そして何らかの影響を社会に与えることができるのではないか。だからこそ、その作品に責任を持ち、ひたむきに誠実に一つひとつの役に向かい合っていこうと、紀香さんは心に決めた。

 その4年後、「ギネ 産婦人科の女たち」で産婦人科医を演じた時も貴重な出会いと学びがあった。

「産科医療の問題を扱った作品でしたが、当時は、医療ドラマで産科を取り上げるのは難しいと言われていました。出産で命を落とした母子のご遺族、そして担当した産科医の双方を守る“無過失補償制度”ができたばかりで、まだまだ産婦人科医をめぐる環境は厳しいものだったからです。過酷な状況の中、ベストを尽くしているのに救えない命があり、訴訟を抱えながら辞めていく産科医も多いと聞きました」

 スーパードクターは登場せずとも、産科医の現実を伝えた内容には多くの反響があった。(菊地陽子 構成/長沢明)

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週刊朝日  2020年6月26日号より抜粋