オンライン授業を拡大している日比谷高校 (c)朝日新聞社
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数学指導の動画を撮影する教諭=神奈川県立住吉高校 (c)朝日新聞社
数学指導の動画を撮影する教諭=神奈川県立住吉高校 (c)朝日新聞社

「この2カ月間、授業は一切ありませんでした。学校がないと厳しいですね」

【写真】数学指導の動画を撮影する教諭

 こう漏らすのは、都立高校に通う3年生の男子生徒。今年度に受験を控えており、明治大など難関私大を視野に入れている。しかし、学校は4~5月の2カ月にわたって休校に。その間、学校からは英語や国語、数学、理科など各教科の課題が出された。

 内容を見ると、このような具合だ。

<現代文 (1)教科書の演習問題 (2)漢字の練習><世界史 ノート作成と問題演習><数学 教科書の問題に取り組む><理科 教科書の予習><英語 教科書の演習 音読練習 単語の暗記>

 いつ、どんな課題に取り組んでも自由。提出期限はあるものの、授業は一切ない。男子生徒は「しっかり学べているかというと微妙」と不安げだ。コロナ禍でこれまでも苦労した。

「学校がないと生活リズムが崩れてしまって大変。勉強できる場所も自宅しかないので、モチベーションを保つのが難しい。新テストが始まり、受験の仕組みも変わりますからね……授業も受けられないとなると、やはり不安です」

 別の都立高の副校長は「進学校など一部の高校を除けば、都立高校は同じような課題を抱えているのではないでしょうか」と打ち明ける。この高校でも、休校期間は課題のプリントを出すなどした。

 オンラインによる授業も検討されたが、現状は厳しいという。パソコン(PC)やスマートフォンが普及し、通信環境が整ってきたとはいえ、すべての生徒が持っているわけではない。家にPCがあっても家族が使わなければならないケースもあるためだ。

 だが、「第2波」を警戒し、オンラインへの対応も避けては通れない。「これから保護者に『オンライン授業に対応できるように環境を整備してほしい』と依頼するところです」(副校長)という状況だ。

 6月に入って授業が再開されつつあるが、理解が浅くなる懸念もある。別の都立高の教員はこう語る。

「これまで6時間授業だったのを7時間にしたり、夏休みを短縮したりして、遅れを取り戻す予定です。まさに“詰め込み”。どうしても通常よりは急がざるを得ない。しっかりと理解できずに進んでしまうことも増えそうです」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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