厚労省の「国民健康・栄養調査」(18年版)では、「定期健康診断を受けていない」と答えた割合は世帯収入600万円以上の男性が16.7%、女性26.1%だったのに対し、200万円未満の男性が40.7%、女性41.1%にのぼった。非正規で仕事を転々とするような場合、健診の対象にならないことがある。健診を受けていなければ深刻な病気を見つけられなかったり、知らないうちに進行してしまったりするリスクが高まる。

 さらに調査では、歯の本数が20本を下回る割合も、所得が低いほど高かったという。男性の場合、野菜を食べる量は世帯収入600万円以上と比べ、200万円未満や200万円以上400万円未満の人は少なかった。習慣的にたばこを吸う割合は、男女とも200万円未満が最も高かった。

 全日本民主医療機関連合会が2011~12年に、生活習慣が原因とされる「2型糖尿病」について40歳以下の患者782人を調べたところ、年収200万円未満の人が6割近くを占めた。所得格差が生活習慣の違いを生み、「健康格差」を引き起こしている。

 将来に不安があると心も乱れる。東京都内で飲食店を営む男性はこう話す。

「休ませた従業員には、パートやアルバイトら非正規社員を含めて休業手当を出しています。でも、もっと心配なのは辞められてしまうこと。仕事がなければモチベーションを保てない。このため非正規社員を中心に、人気料理をネットで届ける仕組みをつくってもらっています。業績アップにはほとんどつながっていませんが、やる気を出してもらえれば……」

(本誌・池田正史、吉崎洋夫)

週刊朝日  2020年6月26日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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