この公式会議は「都中央卸売市場取引業務運営協議会」といい、青果、水産物、食肉、花きなどの業界代表、都議会議員、生産者、消費者団体などが委員として参加している。

 条例の施行で公正な取引が保たれないばかりか、「日本の食文化が危機に瀕する」と指摘するのは委員の1人、畔上(あぜがみ)三和子都議(共産)だ。

「市場は日本が育んできた食文化を維持する調整機能の役割も果たしています。例えば、大間のマグロは有名で高値で取引されますが、小さな漁港でもいい物が採れれば仲卸さんの目利きできちんと商品価値が評価されます。そういう公正さ公平さが零細の生産者の利益も守り、食の品質は全国的に保たれているのです」

 特に懸念されるのは、第三者販売禁止の廃止だという。卸業者が仲卸を通さず、大手スーパーや外食産業と直接取引できるようになれば、事実上、大企業が価格決定権を持つことになりかねない。すでに市場を経由しない市場外取引は広がっているが、この傾向にいっそう拍車がかかる。

「欧米やオーストラリアでは、生鮮市場で巨大スーパーが買い占める割合が非常に高くなっています。日本が同じ事態になれば適正価格は崩れ、卸売市場は大手スーパーの物流センター化してしまいます。仲卸業者だけでなく、弱小の生産者や小売店、小規模スーパーはさらに苦境に追いやられます」(畔上都議)

 築地から豊洲への移転におよそ6千億円もの事業費を投入しながら、豊洲市場は問題山積だ。18年10月に豊洲市場は開場したが、地下水の汚染や交通アクセスの不便さは解決されないままだ。

 設計面でも仲卸業者の声を聞かなかったため使い勝手が悪く、ターレの事故が多発しており、死亡事故も2件起きている。建物の床積載荷重が少ないため、2・5トンフォークリフトが800キロまでしか運べない。仲卸従業員用の駐車場は市場まで徒歩約20分と遠いうえに、料金が月額1万8000円~2万円と高く、悪評ふんぷんだ。

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豊洲市場の設計自体に潜む問題点