同じ外食業界でも、大戸屋とコロワイドでは社風が水と油ほど違う。大戸屋の営業担当社員は言う。

「久実前会長は、野菜のカットから店内調理による手作りにこだわっていました。すべてはお客様においしいものを提供するためです。それが、コロワイドは店内調理をやめることを求めている。これでは、大戸屋ではなくなってしまう」

 コロワイドは、大戸屋に対してセントラルキッチンで調理されたものを各店舗に納入し、店内で仕上げ(最終調理)をする方法の導入を求めている。そういった合理化などで、6億9千万円程度のシナジー効果が出ると主張している。智仁氏も同じ考えだという。

「すべての料理をセントラルキッチンにすべきだとは考えていません。しかし、加工や物流の技術は時代とともに変わっています。提携によるシナジー効果は確実にある」(智仁氏)

 大戸屋が反発している理由は、店内調理だけではない。智仁氏がコロワイドの人事案で取締役に入っていることに、大戸屋側から「株式売却時にコロワイドと約束していたのではないか」との疑念も広がる。一方の智仁氏は「株主提案の話を聞いたのは今年の1月だった」と否定する。

 また、コロワイドは昨年に大戸屋と業務提携の交渉をしている間も、大戸屋の株式を買い増していたことがわかっている。こうした強引なやり方に、今では大戸屋とコロワイドは交渉すらできない状態だ。

 6月5日には、大戸屋グループの従業員有志による社員へのアンケート結果が公表された。アンケートは匿名だが、回答した288人のうち9割以上がコロワイドの提案に反対した。回答には<コロワイド社の買収が成功しようものなら、退社も辞さない>などの厳しい意見も並ぶ。それでも、智仁氏は強気の姿勢だ。

「私は今でも毎日のように大戸屋で食事していますが、最近はお客様が少なくなり、売り上げも下がっていた。しかし、筆頭株主としての意見は取り入れられず、軽視されていた。経営陣はこの4年間、あぐらをかいていたのではないか。私のやり方に同意してくれる社員も必ずいます」

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