「ストレスや不安、葛藤を解消する行為のことをコーピングと言いますが、飲酒はコーピングコストが低く(やりやすい、手軽、簡単)、またシニア層では相対的にコーピングのバリエーションが狭く(行動の種類が少なく)なるので、飲酒以外に方法が少ないという背景があるのでしょう」

 シニアが飲みすぎてしまう心理の要因には、普段から飲酒している人が多いということもあるのではと語るのは、国立病院機構久里浜医療センターの真栄里仁(まえさとひとし)医師だ。真栄里さんは、アルコール依存症に詳しい精神科医。

「厚生労働省の国民健康・栄養調査(18年)では、50代男性の習慣飲酒率が45%で最も高くなっています。またこれはあくまで個人的な印象ですが、中高年になると新しい環境に適応したり、Zoomやテレワークなどの新しい技術や仕組みを習得するのが苦手になり、それがストレスや不安を生じ、飲酒に走る要因になる部分があるのではと感じています」

 しかしそれを「いまは仕方がない」と放置していては大変だ。からだ全体の健康を害さないよう、連続飲酒の習慣を断ち切るにはどうしたらいいのだろうか?

「依存症というと、一日中お酒に浸っていて、赤ら顔というイメージがあるかもしれませんが、それはごく一部です。私があげる危険なサインは、(1)買い物に行くと必ずお酒コーナーに行き、昼の飲酒が常習化している(2)依存を家族に指摘されても認めず、強く否定したり、飲酒量を過少に言う(3)人付き合いの幅が狭く、飲酒が一番の楽しみ、という三つのサインです」(前出の藤井さん)

 また前出の真栄里さんは、CAGEという4問からなるスクリーニングテストで、もし2問以上該当する場合は、アルコール依存症である可能性が高いと指摘する。

「●飲酒量を減らさなければいけないと感じたことはありますか?●他人があなたの飲酒を非難するので気に障ったことがありますか?●自分の飲酒について申し訳ないと感じたことがありますか?●神経を落ち着かせたり、二日酔いを治すために、『迎え酒』をしたことがありますか? 以上の4問です」

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