美容業界のカリスマとして知られた佐伯チズさん (c)朝日新聞社
美容業界のカリスマとして知られた佐伯チズさん (c)朝日新聞社

「1週間、静かに眠り続けて息をひきとりました。手足や体は細くやせても、なぜか顔の肌はきれいなままでした。美肌師としての意地だったのでしょうね」

【写真】「主人の遺骨を食べて…」人生のどん底を語っていた佐伯チズさん

 息子の佳之さんは、佐伯チズさんの最期をこう振り返った。6月5日、美容業界のカリスマが自宅で息をひきとった。76歳だった。

 佐伯さんは昨年秋ごろから右足に違和感を覚え、その後、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された。多くの人にALSという病気を知ってもらいたいと、3月に病名を公表していた。

「2月にイベントでご一緒するはずだったのに、突然キャンセルなさったのです。心配していましたが、病名を公表してから、こんなに早く逝ってしまうとは」

 つらい気持ちを打ち明けるのは、十数年にわたって交流を続けた華道家の假屋崎省吾さん。かつて、テレビ東京系の「たけしの誰でもピカソ」で、佐伯さんとは「ビューティーペア」として全国を巡った仲だ。

「初めてお会いしたときに、『私の顔を触ってみて』と、私の手を取って惜しげもなく触らせてくれました。しっとり柔らかいお肌の感触は今も忘れません。60歳過ぎてから実業家になり、銀座の一等地にサロンを出したのですから、大変なことも山ほどあるのでしょうが、おくびにも出さない強さがありました」

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