そうした料金の回収サービスを昨夏から始めたのが「ノーキャンドットコム」だ。運営する北周士(かねひと)弁護士(東京都)によると、依頼が多いのは客単価3千~5千円で2~6人ぐらい。無断キャンセルで請求される料金は、コース予約の場合は全額、席のみ予約は平均客単価の7割程度が多いという。

 過去には訴訟になった例もある。2018年の裁判では、40人分の料理のコースを無断でキャンセルした客を店が訴え、約14万円と訴訟費用を店に支払うよう命じる判決が出た。

 ただ、訴訟に持ち込み、弁護士を頼むと、最低でも20万円程度の費用がかかり、手間や時間もとられることになる。店側がこうした面倒に煩わされないのが回収サービスの利点だ。これまでに約380件、約1千万円を回収したという。

 北弁護士は「日本の飲食店はどこも薄利で営業していて、こうした対応にお金をかける余裕がありません」と話す。一方、飲食店側は回収の対応をとると、「お客さんが今後予約してくれなくなるので、予約のハードルを上げたくないとも考えています」という。

 結局は客側のモラルの問題で、都合が悪くなったら電話で伝えるなどのマナーを守ればトラブルは避けられる。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2020年6月26日号