自民党の重鎮たちには励まされたものの、小池氏は今回、政党推薦を求めない無所属での出馬を表明。水面下では複雑な“駆け引き”があったようだ。

「二階氏は自民党の推薦を受けるよう小池氏を説得しようとしたが、小池氏は断ったようだ。小池氏からしたら、経歴詐称疑惑で都議会自民党に攻められたので嫌気がさしたのではないか。山本太郎氏が出てきた時に『自民対れいわ』の構図にされたくないという計算があったとも考えられる」(自民党関係者)

 別の自民党関係者は「今回は二階氏が小池氏の手のひらの上で転がされた」と言い、こう解説する。

「二階さんは党内で多少強引ながら小池氏を推薦するプロセスを踏み、安倍晋三首相も下村博文選対委員長もOKを出していた。それなのに、小池氏は最後になって『自民党に4年間いじめられてきたから推薦願は出せない』と断ったそうだ。二階幹事長の側近たちは激怒しているらしいですよ。4年間ずっと都連と対抗してまで小池氏を応援してきたのに、平気で裏切ったことになるんですからね」

 この関係者によれば、2週間ほど前には独自候補擁立を目指す都議会自民党の幹部が官邸で安倍首相と食事をするなどして、矛を収めるよう説得されていたという。こうして党内が固まったかと思いきや、告示直前のタイミングでハシゴを外された自民党は独自候補を立てることが難しくなってしまった。

「小池氏は自民と距離を保ちつつ、対抗馬を封印することに成功した。一枚上手でしたね。自民党は自主投票になりましたが、都議会自民の中にも小池氏を応援する議員はいて、反小池、非小池、親小池でだいたい3割ずつくらい。都連の半数は小池を応援するでしょう。小池氏はそれを読んでいるわけです」(自民党都連関係者)

 安倍首相や二階幹事長をも手玉にとった「女帝」。その再選を「最強の挑戦者」、山本太郎氏は阻むことはできるのか?7月5日の投開票の結果から目が離せなくなってきた。(本誌・上田耕司)

※週刊朝日2020年6月26日号より加筆

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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