「最後に名鉄特急の音を聞きたかったんだよ」1500人を看取った医師が忘れられない患者 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「最後に名鉄特急の音を聞きたかったんだよ」1500人を看取った医師が忘れられない患者

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大崎百紀週刊朝日#シニア#終活
医師の小笠原文雄さん=本人提供

医師の小笠原文雄さん=本人提供

人生の最期を迎えたい場所 (週刊朝日2020年6月19日号より)

人生の最期を迎えたい場所 (週刊朝日2020年6月19日号より)

 新型コロナウイルスの感染拡大で、改めて人生の終わり方について考えた人は少なくないだろう。日本在宅ホスピス協会会長で、小笠原内科・岐阜在宅ケアクリニックの小笠原文雄医師は、患者本人の在宅死の希望を尊重してきた。印象に残っているエピソードを聞いた。

【意識調査】人生の最期を迎えたい場所は?

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 医師の小笠原さんは、31年前に岐阜市内に小笠原内科を開院。これまで約1500人の在宅看取り(このうち一人暮らしは95人)を経験した。
 
その中で忘れられない患者は、2017年12月に腎臓がん(肺転移・骨転移)で亡くなった、一人暮らしの87歳の女性だ。

 在宅での緩和ケアを希望していた。小笠原さんが往診や訪問看護を続けて苦痛は取れたが、認知症が進み、寝たきりになった。

 ずっと家にいたのは、名鉄特急の始発列車を見ながら発車時に流れるメロディーを聞くことが、60年続けてきた生活の楽しみだったからだという。

「血圧が80と低くなり、(長男の)嫁から『入院させて』と電話があったので、私は看護師らと訪れ、嫁、孫息子と一緒にACP(人生会議)を始めました。途中で女性は介護されてトイレに行き、戻ると私の目の前に座り、私の手を握り、愛おしそうにさすりました。驚くことに、立ち上がって私の背に回り、肩もみまでし始めたのです。終わるとふらふらとベッドに戻り、そのまま眠りました」

 その姿を見た家族は、本人の希望を尊重して、入院させることを諦めた。翌朝、女性は旅立った。

「最後に名鉄特急の音を聞きたかったんだよ」

 と小笠原さん。本人の希望を尊重した家族の心は、穏やかだったという。(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2020年6月19日号


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