「Bさんは入院して様子を見ることになりましたが、食事量が戻らなくて。デイサービスを再開するどころか、家に戻ることさえ難しい状況で、今はご家族と施設への入居を前提に検討しています」(水野さん)

 こうしたケースはほかにも見られたため、水野さんは休業要請でデイサービスに通えなくなった利用者21人に聞き取りなどの調査をした。

 すると、全体の6割にあたる13人に、何らかの悪影響が出ていた。具体的には、「昼夜逆転の生活になり、認知症も進んで、夜中にみそ汁を作るようになった」「外出先で転倒していた」「(認知症が進んだことで)外に出て空き缶を拾うようになった」「一日中寝ている」などだ。Bさんのほかにも入院が必要となった利用者がいるという。

 一方、デイサービス以外にも外出の機会があった人ほど、影響は小さかった。

 デイサービスの役割は、食事、入浴、排泄といった日常生活を送るために必要な部分を支援するところにある。

「その部分を訪問介護などで補えば、利用者さんの健康状態は維持できると思っていましたが、そうではなかった。デイサービスに行くことで人と交流し、生活リズムを整える。それができなくなったことのダメージは予想以上に大きいことがわかりました」(同)

 ヘルパーも日々、不安を抱えながら、サービスを提供している。

 NPO法人グレースケア機構(本社・東京都三鷹市)の副所長で介護福祉士の加守田久美さんは、週に数回、訪問介護に出向く。

 最初に新型コロナの影響を感じたのは、東京都が企業に対して在宅ワークを推奨し始めたころだ。

「仕事が在宅に切り替わり、家族で介護ができるので、訪問介護はキャンセルしてほしい、という連絡が相次ぎました。利用者さんの数が3割ほど減ったという印象です」(加守田さん)

 キャンセル理由のすべてがそうだとは思わない。感染リスクを避けるため、家に人を入れたくないという気持ちもあるのではないか、と加守田さんは推しはかる。

次のページ