「怒るべき対象がいないところに行けばいいのです」

 マスクがない、店員の対応が悪い、とイライラしてしまう店ならば、そこに行かなければいいということだ。

「というのも、怒りの対象を目の前にしたら、アンガーマネジメントといった怒りの対処法も難しくなるからです。怒りの感情は、『自分は正しい』という強い思い込み。しかも勝ち負けの感情で、原因は関係なく怒りがいったん発動すれば、勝つまで徹底的になってしまいます。瞬発的に我慢を抑えるスキルを身につけようとしてもダメなんです。怒りは津波。雨水をせき止める土嚢(どのう)では防げません」

 怒りを鎮める魔法などはない、というのが下園さんの意見だ。

「思考や手順で(怒りを)変えようとするのは諦めて、自分に褒美やエネルギーを与えて体と心を休めることのほうが有効です。よく寝て、栄養も大好物もしっかり取るなどしてハッピーな気持ちになりましょう。緊張が取れるからです。大切なのは、そこに罪悪感を覚えないで、ということ。今はイライラしているからいいの、というふうに受け止めてください」

(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2020年6月19日号