ここまで書いたうえで、少し驚くようなことを述べるのをお許しいただきたい。

 それは、「議事録公開は実はあまり意味がない」ということだ。

 私の30年の官僚経験から言えば、議事録は改ざんされるものだ。政府を批判する意見は、削除されたり、弱いトーンに書き換えられる。もちろん、発言者の了解を取ってのことだ。

 では、そういうことを防ぐにはどうしたらよいのか。そのヒントになる例を紹介しよう。

 私が事務局を務めた国家公務員制度改革推進本部顧問会議の議事公開要領(写真)では、まず、会議のインターネット配信を行うと決めた。これで議事録改ざんは不可能になる。記者の傍聴を認め、すぐに記事配信してもらう。

 そのうえで議事録を作成公開すれば、正しいものしか出てこない。

 ここまでできなくても、議事を録音した電子ファイルをネットに上げれば、AIを使った文字起こしを国民がやってくれるだろう。公開できない場合もその電子ファイルを公開可能になるまでは永久保存とすれば、手間暇かけずに全ての記録が残り、後年の歴史的検証も行える。

 大改革のように思えるが、この改革は明日からでも実行可能だ。必要なのは安倍総理の「やれ!」という号令一つ。官邸主導なら、お家芸のはずだ。

週刊朝日  2020年6月19日号

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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