教会のボランティアグループから食事を受け取るホームレスの人たち=横浜市、(撮影/桐島瞬)
教会のボランティアグループから食事を受け取るホームレスの人たち=横浜市、(撮影/桐島瞬)

 正式な居住先を持たない路上生活者は全国に約5千人。新型コロナウイルス感染拡大の影響で失業者が増えたことから、さらに増加すると予想されている。いま、こうした人たちに10万円の特別定額給付金が届かない懸念が出ている。

 平日の夜8時ごろ、ホームレスが寝泊まりする横浜スタジアム周辺や関内駅(ともに横浜市)の近隣で食事を配るグループがいる。そのうちの一つ、カナン・キリスト教会では、週2回の炊き出しと合わせて週6回、彼らの寝泊まりする場所へ出向いて食事を配り続ける。段ボールを囲って寝床にしていた40代ぐらいの男性は、パンとおにぎりを受け取ると、「食べ物を得る数少ない機会。とても助かっています」と言葉少なに話した。

 横浜市は東京23区、大阪市に次いでホームレスが多く、500人ほどが路上生活をしていると言われる。同教会の佐藤敏牧師は新型コロナが蔓延(まんえん)したいま、食べ物を口にできず、体調を崩す人たちがいることを気にかける。

「感染が広がるまでは、私たちや他の団体が週に何度かホームレスの人たちに食事を提供できていた。しかし、3密(密閉、密集、密接)を避けるために炊き出しが減り、栄養失調なのかやせ細って亡くなってしまった路上生活者もいた。新型コロナで失業者が増え、食べることにすら困る人たちがこれ以上増えないか心配だ」

 こうしたホームレスなどの生活困窮者にとって、10万円の特別定額給付金はことさら大きな意味を持つ。だが、もらえない人たちが多数出るのではないかと予想されている。それが住民登録の壁だ。

 総務省によると、今回の定額給付金の給付対象者は今年4月27日時点で住民基本台帳に記録されている人で、対象者の属する世帯主が給付を受け取ることになっている。だが、「路上生活者の中には、給付金を振り込む銀行口座はおろか、住民登録さえない人も少なくない」と話すのは、横浜市内の生活困窮者らの支援を続ける寿支援者交流会の高沢幸男氏だ。

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