「刺し身全般には日本の甲州かフランスのシャブリがよく合います。でもマグロのトロのように脂がのった赤身には、ほのかな渋みと適度な酸のあるロゼ・スパークリングがお薦め。口の中でまろやかに調和します」(加藤さん。以下同)

 焼き鳥はタレと塩で異なり、「タレには赤い果実の香りのするフランスのピノ・ノワール。塩にはミネラル感のあるシャルドネ」。

 目から鱗が落ちたのが、

「鯖の味噌煮には、チリやオーストラリアのカベルネ・ソーヴィニヨンかシラーズが良いでしょう。魚の脂と旨味、味噌の甘さとコクを受け止めてくれます」

“チリカベ”は非常にコストパフォーマンスが良い。さっそく記者は近所のスーパーで「サンライズ カベルネ・ソーヴィニヨン」を千円足らずで購入。これが不思議なほど合うのだ。

 高級割烹で和食をワインでいただく店がある。それと同じこと(?)を安価に楽しめ、なんか優越感。

「鰻の蒲焼きには、樽の風味があり熟成感の強い赤ワインを。フランス・ボルドーのメルローやボージョレのガメなら、鰻の旨味を倍増させます」

 他にも、すき焼き×日本のメルロー、ブリ照り焼き×チリのカルメネールかメルロー、お好み焼き・たこ焼き・焼きそば×イタリアのランブルスコかスペインのテンプラニーリョといった組み合わせが良いそうだ。

 レストランから料理をテイクアウトするのがごく当たり前になった。これまでインド料理を持ち帰ることはなかったが、暑さもあってタンドリーチキンとシシケバブを購入。木暮さん、加藤さんの助言に従い、小麦系ビール、2種の白ワイン(ゲヴェルツトラミネールとモスカート)と合わせた。それぞれが持つ柔らかい酸味と甘い香りが、スパイシーな肉を包み絶品。

 中華料理の日には、ベルギー産ビールのシメイ・ブルーとロゼワインで。いつものビールや紹興酒とは違う非日常感を満喫できた。

 普通の料理も、組み合わせる酒によって贅沢な空間を演出できる。さらに料理そのものにも非日常感を得たいという方には、本誌が絶対の自信を持つ取り寄せの逸品(別表)を薦める。これで家飲みが100倍楽しくなること間違いなし。(本誌・菊地武顕)

週刊朝日  2020年6月12日号