「神の手」を持つ“不届き者”古澤巌 上皇ご夫妻との演奏を明かす (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

「神の手」を持つ“不届き者”古澤巌 上皇ご夫妻との演奏を明かす

連載「RADIO PA PA」

このエントリーをはてなブックマークに追加
延江浩週刊朝日#延江浩
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞

バイオリニストの古澤巌さん(本人提供)

バイオリニストの古澤巌さん(本人提供)

 TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は、バイオリニスト古澤巌さんが明かした上皇ご夫妻との思い出について。

【古澤巌さんの写真はこちら】

*  *  *
 渋谷Bunkamuraから東急本店正面口へ抜けた所で懐かしい後ろ姿に会った。それは「神の手」を持つと言われるバイオリニスト古澤巌さん。懐かしいといっても、岡山に取材旅行へ行ったし、「ジェットストリーム」のテーマ曲「ミスター・ロンリー」をベルリン・フィルとで新たに収録をお願いしたこともあったからそんなに昔ではない。弓を構えた当時の古澤さんの佇まいと目の前の後ろ姿が重なり、懐かしさが込み上げたのかもしれない。暮れなずむ時刻だった。

「いや、ちょっと飲みましてね。酔いざましにこのあたりを何となく眺めていたんです」

 トレードマークは白い帽子。世界的バイオリニスト古澤さんがそう言って微笑み、音楽家はどこにいても絵になるものだと思った。

 先日、古澤さんにラジオにご出演いただいた。誰にも話していない、とっておきの話を披露してもらう企画だ。TOKYO FMから皇居の新緑を眺めながら、古澤さんは上皇后美智子さまとの音楽をめぐる逸話を楽しそうに話してくれた。

「美智子さまのピアノと僕のバイオリンで練習することになりました。僕はチェロの弓でバイオリンを弾くんですが、あろうことか弓を忘れてきてしまった。どうしようと思っていたら上皇陛下がなんとビシッとスーツにネクタイで現れた。何しろこっちはTシャツにコットンパンツ。しかも肝心の弓もない。勇気を出して、『申し訳ありません。実は弓を忘れてしまいました』と申し上げたのです」

 その日は上皇ご夫妻との食事が用意されていた。古澤さんの気持ちはいかばかりだったか……。

「食事が終わってから陛下がスクッと立ち上がられ、2本の弓を持っていらした。『どうぞお好きな方を』と。一本はボロボロ、もう一方はピカピカで使ってない感じでした。結局、ピカピカの、まだ陛下も使ってなさそうな弓を使わせていただいたんですね。後にも先にも陛下の弓で弾かせていただいたのはこの不届き者の自分だけだと思います(笑)」


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

続きを読む

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい