また家族関係においては、あまり家族にこうであってほしいという要求を持たないようにすることも大事だと、前出の藤井さんは話す。

「長く連れ添っていらっしゃるご夫婦だと、どうしても相手に対する要求水準が高くなっている場合があります。そして『こんな大変な時期なのだから、もっとこうしてくれればいいのに』『なんで、もっとこういうことをしてくれないのかな?』とイライラする。そしてもし自分ではなく相手のほうが鬱気味になってきたりすると、心配な気持ちプラス『こんなときに何が鬱気味? しっかりして!』という不満も出てきて、自分の心も相手の心も悪い状態になってしまう場合があります」

 家の中で共に過ごす時間が以前よりも多いのであれば、そこで“ぴったり寄り添う”ことはない。むしろ、“ゆるく寄り添う”スタンスを大切に。

「それぞれが、それぞれのペースで頑張ればいいという気持ちを持って、あまり相手に逐一干渉しないことです。心理学では『価値の明確化』というのですが、『一番大事なことは何か』ということに立ち返ることも重要です」(藤井さん)

 お互い普通に食事がとれていて、少ない時間でも会話が持てて、普通に暮らせているのであれば、それでいいではないか。ちょっとくらい相手が家でボーッとしていても、いちいち目くじらを立てたり、咎めたりせずに。

「私たちはいままでとは違う状態に置かれているのですから、普段とは違う反応が相手から少しくらい出てくるのは普通なのだと受け入れる部分も、ある程度は必要なのです」(同前)

 人間にあって、ウイルスにはないもの。それは「知恵」である。自分の心、そして家族の心をいたわる方法を身につけながら、日々の暮らしを整えていこう。

週刊朝日  2020年6月12日号