また睡眠に関しても、もし1週間続けて“寝ても寝ても眠りが浅い”という状態が続くのであれば、精神的な不調を疑ったほうがよいと名越さんは言う。

 ほかにも危険なサインはいろいろある。心理学者の榎本博明さんは「何もやる気が起きず、日頃楽しんでいたこともまったく楽しめなくなった」「他人に会うのが面倒」「他人と話すのが面倒」という方向に気持ちが傾いてきたときが危ないと話す。

 また心の不調が、めまいや吐き気という形で現れてくることもあるという。

「もしそうした状況が続く場合は、かかりつけの医師に相談することも大事です」(前出・藤井さん)

 では、そのまま深刻な鬱状態に陥らないようにするためには、生活の中でどんなことに気をつかっていけばいいのだろうか? 運動、食事、睡眠に気をつかうということや、日々規則正しい生活をするといったことはよく言われることだが、それ以外に心がけるべきこととしては、どういったことがあるのだろう。

 前出の榎本さんは「毎日自分に役割を与え、短時間でも何かに没頭する時間を持つことが大事」と言う。

「仲間と集う機会がなくなり、家の中で過ごす時間を持て余して、ついつい余分なことを考えては落ち込んでしまうという方も多いと思います。時間を持て余さないようにするには、常に自分に新しい刺激を与えることが大切です」

 これは家の片づけでも掃除でも、庭仕事でも何でもかまわない。

 朝起きたとき等に「今日は午前中のうちに何と何をやる」というように、日替わり行動メニューを考えるのだ。もちろん趣味に打ち込む時間を増やしてもよい。要は、自分を“何もしないダラダラした状態”に長く置かないこと。そしてできれば自分のためだけではなく、家族、あるいは自分以外の誰かのためにもなることに時間を多く割くことが重要だと榎本さんは言う。

「『自分には、家の中でも果たすべき役割がこんなにあるのだ』という意識が心を前向きにするのです」

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