「ステップを飛ばして、いきなりジャンプにいくのも“あり”ですよ。メールで『お世話になっております』と書き始めるのではなく、メッセンジャーなどで直接相手と仕事のやり取りを始めてしまうのです。家族や友人との連絡に使ったことがあれば、できるはず。やってみてスピードを実感できればしめたものです」

 高年齢ワーカーたちは、管理職時代にデジタルツールを使った書類づくりを部下に任せていた人が多く、エクセル、パワーポイントなど基本的なツールを使いこなせていない。それでも大丈夫なのか。

 意外にも、専門家たちはこの点については寛大だ。先の荻窪氏は言う。

「機能を覚えてから使おうとするから壁が高くなるんです。基本だけ頭に入れ、あとはできあがりを想像しながら、こういう機能があればいいなと思って探して使い、探せても難しそうなら無理せずに先送りする、それでいい。特別なものと思わず、力を抜いてゆっくりと接していってください」

 西田氏も、

「体裁などはどうでもいいので、まずは各ソフトで自分の主張を表現できる最低限のことができるようになってください。それができれば、デジタルファイルを使って若い人とコミュニケーションできる基盤はできます」

実際、経済産業研究所リサーチアソシエイトの岩本晃一氏は50代になって仕事を通じてこれらを体験してきた。

「大組織にいたときは完全に部下任せでしたね。10年ほど前、研究所に来てから部下がいなくなり、ツールを自分で学び始めたのです。何年か続ければかなりの腕になりますよ。もっとも、これからの人は管理職でも自分でツールを使うべきだと思いますが……」

 どうやら、高年齢ワーカーも今から始めて地道に積み上げていけば、何とか流れについてはいけそうだ。では、何もやらずに漫然としていたら、どうなるのか。岩本氏が言う。

「80年代のPCへの流れに最後まで乗れなかった人がどうなったのかを私たちは見てきました。やっぱり会社に居続けられなくなりますよね。歴史は繰り返す、です」

(本誌・相庭学)

週刊朝日  2020年6月12日号より抜粋