ちなみに、わたしの麻雀はどうだろう。家では毎日、よめはんと打っているが、たまに東京へ行ったときは作家や編集者と打つことが多い。レートは黒川ヒロムさんよりずいぶん小さい(なぜ小さいか──。わたしはよく負けるから)。打つ前に食事をし、その料金は誰かが立て替えておいて、麻雀に勝ったものが食事代とゲーム代を払うから、勝ってもマイナスになることが多々ある。だいたいは早朝まで打って解散し、編集者は始発の電車で家に帰り、わたしは始発の新幹線で大阪へ帰る。ハイヤーやタクシーに乗せてもらったことは一度としてない。新幹線は寝過ごして三回も岡山へ行ったから、最近は新大阪止まりに乗っている。

 ──と、ここまで書いて、検察官だ。

 わたしは検事やヤメ検(検事を辞めた弁護士)と何度か酒を飲んだことがある。彼らはおそろしくプライドが高く、ひとをひととも思っていない驕(おご)りが隠そうとしても出てしまう。日本の公訴権を独占し、世の中に怖いものがない思い上がり(検察官が刑事訴追をすれば九九パーセント以上は有罪になる)からか、彼らの唯一の関心事は正義ではなく人事であり、出世競争だと感じた。黒川ヒロムキさん……いや、黒川ヒロムさんの矜慢と不遜もたぶん、そのあたりから来ているのだろう。

週刊朝日  2020年6月12日号

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黒川博行

黒川博行

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する

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