あたしは今回の騒動に対し、頭の中に疑問符がいっぱいついてしまうのだ。

 検察庁法改正案に反対する世論の声が高まり、安倍首相は強行採決を断念した。世の中の人々は、安倍首相が検察人事に手を突っ込み、自分たちの傀儡(かいらい)を長に据えたいという思惑を感じ取り、そこまでやるかと声をあげたのだ。

 すると、安倍首相が推していた黒川氏の賭け麻雀がスクープされ、黒川氏が辞任することになった。

 黒川氏が表舞台から消え、ほら、もめ事はなくなった、とでもいいたいかのようだ。

 しかし、騙(だま)されてはいけない。黒川氏の辞任で今回の騒動に対し留飲を下げるのは違う。黒川氏は、あの人がもっとやりたい放題にしたいがための駒の一つだったにすぎない。

 黒川氏の処分が訓告だけで、それを官邸が決めたのであれば、退職金は余計なことを言わせないための口止め料にさえ感じる。穿ちすぎだろうか。

週刊朝日  2020年6月12日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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