記者会見する日本教育学会会長の広田照幸・日大教授 (c)朝日新聞社
記者会見する日本教育学会会長の広田照幸・日大教授 (c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスの影響で遅れる学生の教育。高校生がつぶやいたツイートをきっかけに、「9月入学」議論が沸いている。しかし、日本大学教授で日本教育学会会長の広田照幸氏は、そのデメリットを訴える。

──安倍首相ら多くの政治家は9月入学に前向きな考えを示しました。約3千人の研究者でつくる日本教育学会会長として反対を表明されました。

 教育制度の実態をあまりご存じない方が、メリットだけに注目して制度の議論を始めた。9月入学にすれば、問題が全て解決するかのような考えはまちがっているし、財政的にも制度的にも大きな負担や混乱を生みます。そもそもの発端は、受験を控えた高校生が長期休校による学習の遅れに不安を感じ、インターネットで9月入学を訴えたことです。当事者にとっては切実な問題です。彼らが意見を持ち発信したこと自体は、非常に立派だと思います。しかし、そこに政治的な思惑が便乗して別の文脈の制度改革論になってしまった。だから、われわれは5月22日に提言をつくり、首相と萩生田光一文科相に提出しました。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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