今、日本のGDP(国内総生産)は約550兆円。それがコロナショックで400兆円以下になるかもしれないとも言われている。民間が支出を控えているなかで、やれることは政府が積極的に支出を増やすことしかありません。だから、100兆円の財政出動が必要なのです。

 財政出動をしなければ、コロナで痛んだ日本経済の再建はできません。そして、経済再建なくして財政再建もありえない。財政再建の話は、この危機を乗り越えてからすべきです。

──消費税の減税については、どう考えていますか。

 消費税は、不景気の時でも安定した財源を得ることができます。しかし、それはウラを返せば不景気で消費が落ち込んでいるときにも、国民は好景気の時と同じように税金を払わないといけないということ。

 これが所得税や法人税なら、不景気でその年の収入や売り上げが下がれば、納税額は自動的に減ります。これは、景気の動きに応じて自動的に税額が調整される「ビルト・イン・スタビライザー」と呼ばれている機能です。ところが、平成時代の日本は、法人税や所得税を下げ、消費税を10%まで上げた。そのために、不景気でも多額の税金を払わないといけなくなり、自動的に納税額が調整される仕組みが弱くなった。特に、消費税は財政的な体力の弱い中小企業の負担が大きい。

 すでに、2019年10月に消費税が8%から10%になったことで、同年10~12月のGDPは年率換算で7.1%も減っています。そこに、コロナショックが襲ったのです。消費を回復させるためには、平成の税制改革を反省し、「昭和の税制」に戻さなければなりません。そのためには、消費税をゼロにすることが重要です。

──大規模な財政出動は、財政規律を重んじる財務省が抵抗します。与野党問わず、政治家には財政規律を求める人も多い。そのなかで、100兆円の財政出動は実現できるのでしょうか。

 1997年に消費税が3%から5%に上がり、同じ年にアジア通貨危機が起きて、日本は深刻な不況に陥りました。自殺者は年間で1万人増え、その後、10年以上も自殺者数は高止まりを続けました。消費増税とコロナショックが同時に襲った今の日本では、97年と同じことが起きる危険性があります。

 しかし、実際にはこうした問題のほとんどはお金で解決できることなのです。さきほど話したように、日銀も国債購入の上限額を撤廃しました。米国や欧州、そして中国も財政出動に動いた。状況は整った。あとは、政治家が決断できるかどうかです。

(聞き手/本誌・西岡千史)

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