「“昔から家にあるのが当たり前だから”という理由でお金を払い続けていることほどもったいないことはありません。これを機会に、普段あまり活用していないものは手放し、今後の支出を抑えることも大切です」

 そう考えると、車も検討材料だと風呂内さんは語る。これはもちろん住んでいる場所やライフスタイルにもよるが、もしマイカーがなくなったとしても生活自体が成り立つのであれば、思い切って手放すという選択肢もあるのだ。

「たとえば、車本体代をローンで組んでいるとします。そして車の維持にかかる税金、車検費用、燃料費、駐車場代等を合算すると概算で年間100万円かかるとしましょう。1年を約52週と考えると、1週間に車関係のお金だけで約1万9千円もかかっているわけです。もしマイカーをタクシーに変えてもよく、しかもタクシー代が1週間にこんなにかからないようであれば、そのほうが断然お得と言えるかもしれません」

 自治体によっては運転免許自主返納によって、タクシー料金が多少割り引かれる場合もある。車の維持に関しても、いまが考えどきなのかもしれない。

 今後はシニア世代の子ども世代(40~50代)の暮らしが大変になってくることも予想される。

「コロナの影響でお仕事がなくなったり、収入が激減したというお子さん、そしてお孫さんの暮らしをサポートしてあげるためにも、シニア世代は自分の家の“お金の整理”をしていくべきです」(中島さん)

 冒頭で紹介した毎月の収入、支出、資産残高の書き出しはぜひ今年いっぱいは続けてほしいと中島さんは言う。この1年間の家計の推移を見て、来年以降の対策を練るためだ。

 またお金の整理と共に行いたいのは、ものの整理だ。家の片づけをしたら、眠ったままの預金口座の通帳を発見、などということもよくある話。そうした、いままでゆるく“ほったらかし”にしていたものをきちんと掌握することも、大切なことなのだ。

 盤石な家計を守り抜いていこう。そのためには、「生活リセット」の意識を新たに持つことが、いま何よりも求められるのである。(ライフジャーナリスト・赤根千鶴子)

週刊朝日  2020年6月5日号