コロナショックは、在宅勤務の普及や感染予防の意識を高めさせ、食品の宅配や動画の配信、オンラインによる診療や学習支援といった分野で新サービスが続々登場した。

 大阪市の飲食店「幸」は夜の営業を休止した時期、新たに宅配を開始。酒粕や塩麹をつかった「発酵鍋」を家で味わいたいという客層を掘り起こした。田端一雅代表は「うちの料理を食べて免疫力を高めたいと注文があった。店のブランドを伝えるためにも宅配は続けたい」。

 いつもと違う仕事や生活のパターンを強いられ、生活や身近な人との関係を見直す機会になった人もいるだろう。株価の下落をきっかけに投資に踏み出した人もいる。

 自動車バッテリー向けの部品をつくるヤシマ(東京都大田区)は、今回のピンチをチャンスに変えようとする会社の一つ。製品の設計、生産・組み立てから検査、梱包まで自動化を進めてきたことが奏功し、危機を乗り越えられそうだという。箕浦裕社長は言う。

「当社の自動化ラインは2~3人で稼働できるもので、在宅勤務も以前から採用していました。今回も交代勤務を実施し、外出自粛などの影響も最小限で済みました。注文の量が減ったため、売り上げや利益は下がりそうですが、今まで整備してきた生産体制が間違っていないことを再確認しました。今年度中には3千万円を投じ、自動化ラインの拡充を計画しています。これからも時代に合ったものづくりの姿を追求していきたい」

 コロナ感染がひとまず落ち着いても、「第2波」を懸念する声は根強い。企業には、コロナ後を見すえた事業や働き方の変革が問われている。(本誌・池田正史、浅井秀樹、西岡千史)

週刊朝日  2020年6月5日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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