藤田さんによると、初心者は基本に忠実に行うことが特に大切だという。

「トマトにはトマト、キュウリにはキュウリの特徴があり、育て方があるからです。以前、キュウリをベランダで育てていた人から、『一つの株から3本しか採れない』という相談がありました。聞くと、日当たりが悪く追肥もしてなくて、水もちゃんとやっていなかった。キュウリは追肥をしなければ育ちません。基本に忠実に育てていけば、これまで3本だった人も軽く10本にはなるでしょう」

 さらに大切なのは「根気強く」育てること。思うように育たなければ原因を探り、土や野菜と向き合いたい。藤田さんは言う。

「手をかけた努力が、自分の収穫という喜びに跳ね返ってきます」

 家庭菜園を「家計の節約のため」と考える人もいるだろう。長く継続的に、しかも大量に作ればあり得るかもしれないが、意外とお金がかかる。こだわればこだわるほど、経費がかさむ。

 フラワーショップ「ユー花園」(東京都世田谷区)ガーデニング担当の波多野以織さんは、「予算と時間と手間をどこまでかけられるか」を考えることが大切だと指摘する。敷地が広ければ、その分作業も増える。害虫の退治や野菜の間引きなどにも追われる。

「最初から欲張らず、55センチぐらいのプランター一つから始めてみては、と話しています。1平方メートルもあれば十分。ここから広げていけばいいのです。生き物を育てる感覚と同じです」(波多野さん)

 地元の貸農園(ファミリー農園)を利用することもできる。例えば、世田谷区内には20あり、2年足らずの利用期間で使用料は2万2080円だ。ただ、世田谷区の場合は応募者が多く、募集は現在していないという。

 苗から育てることに成功したら、種まきにも挑戦したい。

「種まきには種まきの楽しさがあります。基本的に育てやすいハーブ(バジルやシソ)から始めて、そこからステップアップしていくことが大事です」

 こう話すのは種苗大手「サカタのタネ」(横浜市)の清水俊英さんだ。初心者にはシソがいいという。多少日当たりが悪くても育ち、料理で活用する場も広いからだ。一方、トウガラシやピーマンなどは、苗まで育てるのに2カ月以上かかるので簡単ではない。

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