A:コロナ相場を予想できた人はほぼいません。私も何度もレポートを書き直したし……。最終的には、どこまで下がるかさっぱりわからなくなってしまったので、「5年後、10年後を見ながら投資する時期だ」みたいな、当たり障りのないレポートしか書けなくなった。今回のコロナ相場で、プライドをズタズタにされたアナリストは多い(苦笑)。

C:個人投資家の間で「逆神」として不動の地位を築いたのは、某ネット証券のストラテジストですね。2月半ばには早々と「新型肺炎という悪材料の一番深刻な状況は過ぎ去った」と発信し、日経平均が2万2千円台に下げたところで「新型コロナに振り回される相場もそろそろ終盤」と分析していました。2万1千円を割ったら「もうこれ以上の下値余地はない」、2万円を割った日に「ここが陰の極で底値になる」、1万8千円割れで「今週はさすがに底入れ」と、この人が「もう下げない」と発言するたびに、日経平均は下げるから、逆張り指標にして日経先物をトレードしていた人もいるとか(苦笑)。

D:日本のマーケットは、1、2月からしっかりコロナリスクを織り込んでたんですけどね。マスクのメーカーなどコロナ関連銘柄などはどんどん買い上げられていましたから。でも、アメリカが好調すぎて、史上最高値を更新していったので、日経平均の暴落を予想できる人がいなかった。

B:唯一、コロナ相場を正確に予想していたのは、ひふみ投信の藤野英人さんかもしれませんね。ひふみは1月末の段階で、株の組み入れ比率が99%だったのに、2月末には69%まで下げてキャッシュ比率を高めていた。さらに、コロナ騒動がプラスに働くドミノピザやオンライン会議システムのZoomなどを新たにポートフォリオに組み入れた。まさに、お手本のような投資です。

(ジャーナリスト・田茂井治)

週刊朝日  2020年5月29日号より抜粋