「患者の日常生活全体に目を向け、家族や周囲の人々も含めたアプローチは大変そう。それだけに主人公の『健康はチーム戦』という言葉が心を突く」(往)

 最後に特殊な医療ものなのが、「賢者の学び舎 防衛医科大学校物語」(小学館)。医師資格を持つ幹部自衛官(医官)を養成する学校を舞台にした物語だ。

「防衛医科大の教育内容や災害地での医官の任務など知らなかったことばかり。さまざまな事情や目的を持って入学した登場人物の成長にも心を打たれます」(紀)

■サスペンス、ミステリー
 手に汗握る展開に、時を忘れてしまうのがこちら。謎の感染症を描いた「リウーを待ちながら」(講談社)は、タイムリーな作品。

「爆発的感染拡大、都市封鎖、デマの連鎖、医療リソースの減耗、大切な人との別れなど、まさに今の状況。単行本の帯にある『ああ、きっと、日本ならこうなる』という言葉は、ただの煽り文句ではない」(往)

 次は不思議な能力を持つ少年の物語を。「夢で見たあの子のために」(KADOKAWA)は、高校生が主役のダークミステリーだ。

「両親を惨殺された主人公の境遇がかなり重いものの、特殊な能力を活用し、手段を問わず復讐に向かう姿はピカレスクロマン的な魅力があります」(ジ)

「北北西に曇と往け」(KADOKAWA)は、モノと言葉を交わす青年が主役。

「日常とミステリーのバランスが絶妙。アイスランドの描写が素晴らしく、乾いた風の匂いや空気の冷たさが感じられる、精緻で美しい絵に心躍ります。旅行できない今こそ、作品に広がる世界を味わって」(紀)

 コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」を大胆に再構築した「憂国のモリアーティ」(集英社)は、正統派ミステリー好きに。

「ホームズの宿敵モリアーティ教授が天才的な頭脳を駆使し、闇から世界を正す展開に、原作も読み返したくなります」(今)

(ライター・吉川明子)

【書店員がおすすめ!お家時間に読みたいマンガ 「アクション、アドベンチャー」「グルメ」「その他」のジャンル編に続く】

週刊朝日  2020年5月29日号より抜粋