広島市は、民間支援の力を活用するモデルだ。コロナの影響を受けた事業者を支援する企業やNPO法人に対し、かかった経費の一部を補助する。飲食店の宅配サービス用のサイト開設やクラウドファンディングを使った寄付のシステム整備などに、業種を問わず上限1千万円まで支給する。経済観光局の担当者は「国や県とは違う角度から支援を打ち出せればと思いました」と話す。

「財源」という弱点があればこそ、新たなアイデアが生まれることもある。コロナ対策を機に、今までにないほど地方自治が注目される時代がやってきそうだ。

<自治体の財政指標>
 自治体の財政力を示す指標はいくつかある。自治体ごとの考え方や、地域特有の事情や置かれた環境によって予算編成の仕方は異なる。健全性を判断するにはいろいろな指標をみる必要がある。ポイントを紹介しよう。
(1)「財政力指数」
 自治体を運営するのに必要な経費に対して、税収など自前の収入がどれくらいあるかを示す。数値が高いほど自前の財源で行政を運営する力が強いことを意味する。1を上回れば、国や都道府県の地方交付税や交付金を受けずに済み、「不交付団体」と呼ばれる。
(2)「財政調整基金」
 財源に余裕がある年に積み立て、不足する年に取り崩すことで財源を調整するためのもの。「もしも」の時に備えた貯金にあたる。
(3)「標準財政規模」
 人口に応じて想定される一般財源の規模を示す。標準的な行政運営をすれば、このくらいが見込めるだろうという仮想的な財源規模をいう。今回、財政調整基金と見比べてみたのは、自治体の規模は大小様々で、規模に応じた備えの厚さを比較するためだ。

(本誌・池田正史、松岡瑛理、吉崎洋夫/今西憲之)

週刊朝日  2020年5月29日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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