東川町(北海道)は地元金融機関の協力を得て、国の特別定額給付金を前倒して支給する。金融機関が町民に10万円を融資し、支給額を町が返済する仕組みを作った。これなら新たな財源はほぼ必要ない。現金を早く手に入れたい町民のニーズに、アイデアで応えた格好だ。

“現物支給”に打って出る自治体もある。福津市(福岡県)は、児童扶養手当の対象世帯など経済的に困窮する家庭に児童1人あたり10キロのコメを自宅に直接届ける。臨時休校で発注の途絶えた地元の給食業者から地元産のコメを市がまとめて買い取った。こども課の担当者は「他の自治体には『お米券』という形を取っている例もありましたが、より早く現物を届けるほうがいいと判断しました。家庭と給食業者の両方を支援できればと思います」と話す。

 地場産業の保護に重点的に力を入れる道もある。

 国内有数のブランド和牛、近江牛の生産地である近江八幡市(滋賀県)は、繁殖や飼育を手がける地元畜産農家向けに独自の支援策を打ち出した。出荷停止が相次ぎ価格が下落する近江牛に対し、国からの補助制度にさらに上乗せして現金を支給。牛の購入費用を一部負担する事業と合わせ、畜産農家をサポートする。

 一方、財政力が低くても、トップの熱意や独自の工夫でコロナに立ち向かう自治体もある。

 代表例が上砂川町(北海道)。財政力指数が0.12と全国的にも低く、地方交付税に頼らざるを得ない。だが、コロナ対策では5月1日までに全町民約2800人に5千円の商品券を配り終えた。

 同町ではこれまで人件費削減など財政再建に取り組み、地道に基金を積み立ててきた。今回はその基金から財源を取り崩した。企画課の担当者はこう話す。

「今までの取り組みが今回の支援につながった。自粛中とはいえ、食料品など生活必需品は買う必要がある。大型連休前までに配布することで、必要な需要を刺激することができた」

 自治体の「貯金」にあたる財政調整基金残高が少ない自治体も、アイデアを絞りながら奮闘していることがうかがえる。

 例えば、「テレワーク支援」を打ち出した北九州市。宿泊稼働率が激減した市内のホテルを仕事場として使ってもらい、利用者には1人1日あたり最大3千円を支給する。財源を節約しつつ、売り上げが減ったホテルと在宅勤務を余儀なくされた市民へ一石二鳥の効果が期待できる。

 市長発案のもと、現場職員が具体的手法を考えた。同市ではほかに、市が先にホテルの部屋を買い上げ、収束後に割引して販売する「宿泊モニターキャンペーン」も行う。

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