ウクライナ南部のクリミア半島併合問題で14年以降、欧米諸国は対ロ経済制裁を続けており、日本も同調している。経済制裁に対しては、こう批判する。

「一方的な制裁は排除されなければならないし、少なくとも一時停止しなければなりません。なぜなら、医薬品や食料品などの人道的な物資の供給を妨げているからです」

 プーチン大統領が今回、クレムリン近くの無名戦士の墓に献花した際に「共通の記憶がわれわれを一つにしている」と語っている。

「第2次大戦に勝利した世代の偉業を共通の記憶として、われわれロシア国民は団結しているということです。また、反ヒトラーで連合国が団結したように、いま、われわれは国際テロ、大量破壊兵器の拡大、組織犯罪、そして今回の新型コロナウイルスと戦うために世界各国が国連の下に協力しなければならないと思っています」

 世界が新型コロナの制圧に向けて取り組んでいるさなか、米国のトランプ政権は新型コロナの発生源は中国・武漢のウイルス研究所だと主張。世界保健機関(WHO)の対応についても「中国中心だ」と非難し、拠出金支払い停止を表明している。米国のそうした姿勢について厳しく批判する。

「事実無根の非難は適切ではない。中国は一貫して感染症対策を進め、その結果、事態を収束させることに成功している。WHOも新型コロナに関する情報を収集して、加盟国に適切な助言や勧告をしています」

 安倍首相は、停滞している北方領土問題を含む日ロ平和条約交渉を打開させたいところだが、新たな懸念材料が持ち上がっている。4月24日、プーチン大統領は第2次世界大戦の終結日を9月2日から3日に変更する法案に署名した。

 3日はソ連時代に「対日戦勝記念日」として定められていた。ソ連崩壊後、廃止されていた祝日が復活した形だ。

 ロシア側には、北方領土の実効支配を正当化する狙いがあるとみられる。延期された式典が9月3日に催される場合、安倍首相は出席しない方針とも伝えられている。

「正式名称は『第2次世界大戦終結日』で、『対日戦勝』という言葉は法律にはありません。戦勝状態から和解と協力への道筋を探求する日です。(北方領土問題の解決策については)平和条約はとても敏感な問題です。両国の間でさまざまな世論や感情を引き起こす問題をうまく解決するには、環境づくりが必要です。経済協力や国際問題解決のための協調を進めることで、日ロ両国民が受け入れ可能な解決策を見つけることができるのではないかと思います」

 紛争や歴史観については当事国間で異なった見方が当然、起きてくるだろう。粘り強く対話する姿勢が必要だ。平和条約交渉の妥結はなかなか一筋縄ではいかないが、新型コロナ対策では大規模検査体制で致死率を下げたのならば、見習うべき点があるのではないか。(本誌・亀井洋志)

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