結局、自分事ではなく他人事なんです。志村けんさんが亡くなったことで、コロナが自分事になったってよく聞きました。これはつまり、身近な人や自分がよく知っている人が関わらない限り、ずっと自分事にはならないということの裏返しですよね。

 芸能人も含め、みんなが「ステイホーム」と盛んに言っています。しかし、それを実践することで、その裏側では苦境に立たされる人が出るということを、どれだけの人が考えて言っているのか。

 国内の飲食店もそうだし、先進国がいろいろ自粛する影響で、途上国の工場で働く人たちは生活苦に陥っています。彼らにとっては、ステイホームの言葉もウイルスなんです。

 芸能人に限らず、世の中に影響力がある人たちは、本来ならば、「ステイホーム」と「補償」をセットで言わなくちゃいけないはず。一途にその道に打ち込む人を「○○馬鹿」と言いますが、世の中の機微を感じ取るアンテナが立ってない人はただの馬鹿です。そういう馬鹿をあぶり出したのがコロナではないかとも思います。

(本誌・秦正理)

週刊朝日  2020年5月22日号