室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中
イラスト/小田原ドラゴン
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 作家・室井佑月氏は、新型コロナウイルスが猛威を振るう今、安倍晋三首相がトップであることを問題視する。

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 4月25日の東京新聞、「《新型コロナ》旅行クーポンや観光地PR 補正予算案に『時期尚早』項目」という記事が載っていた。

「新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急経済対策となる総額二十五兆円超の二〇二〇年度補正予算案には、観光や飲食、イベントの振興といった項目が盛り込まれている。日々の資金繰りに悩む中小企業や個人事業主への救済策が十分ではなく、有識者は時期尚早の内容が目立つとして、『本末転倒』と指摘する」

 ほんとうにその通りだ。内容としては、経済産業省が観光業や外食産業などを後押しする「Go To キャンペーン」を展開、そこへ1兆6794億円を計上。国土交通省は訪日客回復のプロモーションに96億円を計上、という具合だ。

 コロナでこの国を含めた世界が大変なことになっているのに、まだ各省庁や、各団体と仲の良い政治家の利益が優先か?

 不評であった布製の「アベノマスク」、野党が追及したら、466億円かかるといわれていたものが90億円で収まることになった。こうなってくるとおつりを誤魔化(ごまか)すなんて話じゃない。追及されなければ、ここで出た差額はどうなっていたんだろう? 誰かの懐に収まっていた?

 安倍首相と森・五輪組織委会長は、任期や選挙や、自分の年齢を考え、東京五輪をどうしても来年やりたいみたいだ。中止の場合、保険が利くらしいが、延期の場合、さらに3千億円はかかるといわれている。国民の負担だ。この金はコロナ対策に使われるべきだ。そんなにやりたいなら、自分の金でやればいい。

 全国の医療現場で、人や必要な物が足りないといわれている。コロナ問題が起きてから、いく日経った? 各家庭が、マスクや消毒用のアルコールをいまだに市場で買えないのも問題だが、こちらはもっと大問題だ。

 26日の共同通信の一報では「防護具不足が深刻、院内感染拡大 19都道府県54施設、783人」だって。

 安倍首相は会見で現場の医療関係者に対しねぎらう言葉を述べるが、医療関係者は現代の特攻隊ではない。ほんとうに彼らに対し感謝しねぎらう気持ちがあるなら、もうすでに対策が取られているだろう。

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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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