「検査のキャパシティーは限られていると思いますが、医師が検査を受けたほうがいいと判断した患者さんまで待たされている現状がある。そこは即座に広げていく必要があります」

 都の近況については、こう指摘する。

「確かに、4月下旬から減少傾向にあるのは事実です。ただ、陽性率が下がってきていることを早く判断しようとすると、都のような計算方法(1週間単位の算出法)になると思います。緊急事態宣言で市民の活動が低下したことが、数字になって表れたのでしょう。ですが、楽観してはならないのは、新型コロナウイルスの特徴は、感染してからだいたい2週間後に症状が出始めて陽性が分かります。重症化して死亡する人の例でみると、そこからさらに2週間ほどの時間差があります。しばらく慎重に推移を見守る必要があります」

 都の検査実施人数が、直近の1週間の5月4~10日は1046人。4月27~5月3日の1784人、4月20~26日の2021人から激減しているのが非常に気になる。

 それでも、現時点では欧米ほどの猛威は振るっていない。樋坂教授のグループの研究では、感染拡大30日後の死亡者数の割合を比較すると、欧米はアジアの100倍にもなる。地域差の原因は、国の政策、高齢化の程度、医療環境のほか、民族の遺伝的要因(遺伝子配列の違い)の可能性も挙げる。

「いままでの感染症ではあまり研究されなかった分野だと思いますが、そうでないと100倍の差は説明がつきません」(樋坂教授)

 前例のない事態が、世界中で巻き起こっているのだ。東京にピークアウトの兆候はあるのだろうか。(本誌・亀井洋志)

※週刊朝日オンライン限定記事