その後、義父と口論となり関係がこじれると、妻は実家に行き、戻ってこない。

 川崎市内から関東各地のスーパーの配送センターへ4トン車で食品を運んでいるSさん(25)は、自宅では親や兄弟からも距離を置かれるという。積み込みや荷下ろしの作業が、倉庫などで行われることに過剰に反応しているようだ。

「現場では暑くて汗だくでもマスクは必ず着用しているし、到着したらまずアルコール消毒。出発する直前も消毒は欠かさないのに」

 打ち合わせの際は2メートル以上離れ、「同僚との会話ですら姿が見えていても携帯電話で話しています」(Sさん)。

 宅配便の運転手は、配達先から暴言を浴びる。茨城県南部で1日120軒前後に荷物を届けているOさん(58)は、毎日1~2件は必ずあるという。

「先日、配送先の家のチャイムを鳴らすと、ドアが10センチほど開いて、『あんたコロナ大丈夫? 汚いからそこ置いといて』って」

 コロナ禍でも、運転手は物品を運び、私たちの外出自粛の生活を支えている。心ない言葉を投げつける前に、そのことに思いをはせるべきでは。(高鍬真之)

週刊朝日  2020年5月22日号