リアル(現実)だけでなくバーチャル(仮想)、つまりオンラインをどう使うかも重要だ。研究所や工場などを除けば、本社の仕事はオンラインでやれることが多い。例えば、週の3日ぐらい出社したり、1日おきに出社したりして、あとは全部オンラインでやる。庭の草取りも、会社の会議も、両方やれる日ができる。給料が減るわけでなく、むしろ効率がよくなって給料が増えなければならない。それこそが生産性のアップだ。

 本質を見られる点でもネットやテレワークはいい。お茶を出すとか、ゴマをするとかが何の意味も持たないからだ。オンラインでのやりとりを通じて、その人が持つ知的能力や論理性がチェックされる。何を考え、何を語るのか、ということが価値になる。大きな価値の変化だ。

 今回のコロナで、中国は武漢での都市封鎖を強権的にやった。独裁的な、専制主義の典型例みたいだった。米国なども有事にはリーダーシップが発揮しやすい。専制的にやったから効率よく見えた。かたや日本の安倍政権は、専門家の意見を聞きつつ相談しながら進めた。世界からしたら、これほど民主主義的な国はなかった。野党やマスコミから「独裁者」みたいに言われていた首相だが、すごく民主的な人だということを露呈した。安倍さんはそんな危険な人ではなかった(笑)。

 実験科学者の立場からしても、米ニューヨークなどのコロナ感染者は爆発的に増えたが、日本はそこまでではない傾向だ。ずるずると緊急事態宣言が遅れた、悠長だと批判する人もいるが、日本の民主主義をベースにしたやり方で、コロナを抑えられたとしたら極めて興味深い。こうしたパンデミック(世界的大流行)に対しては、専制的で独裁的な強いリーダーシップよりも、抑えられるというエビデンス(証拠)になる。

 そういう意味でも、日本国民の「民度」は高い。抑えられると期待しているし、そう信じたい。(本誌・宮崎健)

※週刊朝日オンライン限定記事