「最高人民会議は10日に予定されていましたが、12日に延期したのです。先に正恩氏が参加する形で政治局会議を行い、与正氏を党の要職に復帰させた。正恩氏は何か急ぐように、与正氏を自分の後継者として印象付けを行ったのです。この間、与正氏祭り上げも行われてきました。3月1日には、党中央委員会の宣伝扇動部第1副部長から、最強組織である組織指導部第1副部長への異動を正式に発表しています。組織指導部は人事権、正恩氏への業務報告をすべて統括し、すべて業務の検閲、処罰の権限を持つ部署です。そこのトップ(副部長がトップ)ですから、ポスト的にも事実上の後継者と考えていいのです」

 3月2日、北朝鮮が短距離弾道ミサイルと見られる放射砲を2発発射したことに、韓国側は強い遺憾の意を表明。これに対し、北朝鮮は翌3日、与正氏の名義で「自衛的行動だ」とする声明を出し、韓国青瓦台(大統領府)を激しい言葉で罵倒した。

<青瓦台の低能な思考方式に驚愕する><怖じ気づいた犬ほど騒々しく吠える>などといった具合だ。与正氏の名義で声明を出すのは、これが初めてだ。

「慎まし気なイメージの与正氏が要職に就いた途端に凄まじい声明を出したことで、指導者として着実にステップを踏んでいる印象を受けます。声明文は北朝鮮人民が見ているわけですから、韓国に対してこのくらい強硬な姿勢を取らなければ北朝鮮の指導者は務まらないということでしょう。この間の報道では、極端な男性優位社会の北朝鮮で女性リーダーが誕生する可能性を否定するものもありましたが、『白頭血統』であれば人民は従うはずです」

 ただ、正恩氏や与正氏は白頭血統の中ではもともと“本流”ではなかった。

 父の正日氏には、5人のパートナーがいた。17年2月に暗殺された金正男氏の母・成恵琳(ソン・ヘリム)、正恩氏と与正氏の母・高容姫(コ・ヨンヒ)、金英淑(キム・ヨンスク)、洪一茜(ホン・イルチョン)、金玉(キム・オク)の各氏だ。

次のページ
金正恩と与正兄妹の出生の秘密