橋本愛喜(はしもと・あいき)/大阪府生まれ。父親の工場を継いだあと、日本語学校の講師や米国生活を経て、労働問題を中心に取材・執筆するフリーライターに。R&Bの歌手になろうとしたこともある。(撮影/写真部・加藤夏子)
橋本愛喜(はしもと・あいき)/大阪府生まれ。父親の工場を継いだあと、日本語学校の講師や米国生活を経て、労働問題を中心に取材・執筆するフリーライターに。R&Bの歌手になろうとしたこともある。(撮影/写真部・加藤夏子)

 トラックドライバーたちはなぜ路上やコンビニの駐車場で仮眠するのか? ハンドルに足を上げる理由は? 「ケーキ4500個」を手作業で積み下ろしすることなどを求められるドライバーたちの現場を、自らも同業者だった橋本愛喜さんがレポートし、『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書、760円※税別)として発売された。

「コウジョウにはラジオ体操や朝礼があるけれど、コウバにはないんですよ」

 橋本さんの父親は、神奈川県内でプラスチック部品用の金型を研磨する工場(こうば)を経営していた。しかし、父親は橋本さんが大学卒業直前に急病で倒れた。「オマエが跡継がなあかんで」と言われて育った橋本さんは、工場を継ぐことを決心。父親を慕う「ヤンチャ」な工員さんたちの信頼を得ようと、4トントラックに乗ることから始めた。

 第1章「トラックに乗ると分かること」では、大型免許取得のため教習所に通う様子が綴られる。初めてアクセルに右足、クラッチに左足を乗せたとき、「ここまで股を広げなければならないのか」と驚き、戸惑うなど、女性目線で経験を振り返る。

「編集者さんに自分がトラックに乗った経緯も書いてと言われたんですが、もう読まれるのはめちゃ恥ずかしいです」

 第4章「高い運転席だから見えるあれこれ」と第5章「物流よ、変われ」では、深刻化するトラックドライバー不足と高齢化について書いた。その中でも本書執筆中の2019年9月に、横浜市神奈川区で起きた京浜急行電車と大型トラックとの衝突事故には、特にこだわった。

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