ドラマでは、デビューを目指してがんばるヒロインに、様々な困難や妨害が降りかかる。ライバルたちからは、足を引っかけられたり靴に画びょうを入れられたり。3話では頭から飲み物をかけられたりなども。

 この令和2年春の新作とは思えない大仰な演出や演技、事実をベースにしているはずなのにありえない展開、キャラが立ちまくった登場人物……。そこに1980年代に「スチュワーデス物語」や「スクール・ウォーズ」、「ヤヌスの鏡」、「不良少女とよばれて」、「乳姉妹」といった数々の名作を連発した、いわゆる「大映ドラマ」を重ね合わせる視聴者は多い。「スチュワーデス物語」でいうなら、アユがドジでのろまな亀・堀ちえみで、マサが厳しくときに優しい風間杜夫の「教官」、そして田中みな実が、義手に手袋を付けて嫌がらせをする謎の女・片平なぎさといったところであろうか。

 事実、ドラマの脚本を手がける放送作家の鈴木おさむさんも、

「原作に大映ドラマのような衝撃的なキャラクターも足して、新たなシンデレラストーリードラマとしてお届け出来ると信じております」

 とコメントを寄せており、視聴者の反応は鈴木さんの狙いどおりといったところだろうか。

 とはいえ、ドラマ評論家の吉田潮さんは、

「できればもう少し大映ドラマへのオマージュを感じさせてほしいところ。大映ドラマへのリスペクトをあまり感じないです」

 と、やや辛口だ。

「よく芸能界は清濁併せのむ世界と言いますが、このドラマの芸能界は『濁』だらけに見えますね(笑)。それでいて、劇中のセリフには『虹が』とか『神が選んだ』とかいうラブリーな言葉が連発されるギャップがまたおかしさを加速させます」

 このドラマの「見方」「見られ方」について、吉田さんは、

「純粋にストーリーを楽しんでいる人は一人もいないのではないでしょうか」

 と語る。

「気楽にドラマを楽しみたいという人にとっては、このぐらい突飛(とっぴ)というか、笑える作品というのは、コロナで疲弊している時期には、見やすくていいのかもしれませんね。大映ドラマを知らない若い世代がどう受け止めているのかは、気になるところです(笑)」

 コロナの話題と自粛に疲れた週末に、能天気に楽しめる作品というのは、ある意味、令和2年の春にピッタリの“運命”に導かれたものなのかもしれない。なお、5月9日に予定されていた第4話の放送は、撮影スケジュールの都合で延期となり、この日は第1話に伊集院光と古市憲寿の“解説”を加えたものが放送されるという。再び伝説の1話を楽しむチャンスだ。
(本誌・太田サトル)

※週刊朝日オンライン限定記事