林:ヒドーイ! ほんとにつかさんて、ひねくれてるんだから。(中略)つかさんだって『娘に語る祖国』で、「ママの清らかさと美しさを、おまえは受け継いでいるはずだ」とかありましたよ。なんでうちの夫のことは非難されて、ママのことは非難されないんですか(笑)。

つか:つい筆が滑って。おまえも筆が滑ったんだ。お互い筆が滑ったことにしよう。でも、おまえのは滑りすぎだ(笑)。このあいだ、この対談読んだら、おまえら、最近モテるのモテないの、そういう話してただろ? いかんぞ、四十すぎた女二人でそういう話しちゃあ。“おまえら”!

林:いいじゃないですか。つかさんだって昔はさんざんいろんなことがあったじゃないですか。(中略)自分のことは棚に上げて。あっ、そうだ、きょうは本とお芝居の話をするんだった。今度、舞台稽古見せてください。何か差し入れ持って行きますから。

つか:現金がいい(笑)。舞台がはねて、飲み屋に行くんだけど、大変だよ、三十人で焼き肉食ったら。だれが何枚食ったか見てるものね。最後に、「僕、ビビンバ」なんて言うと、殺してやろうかと思う(笑)。

林:ビビンバぐらい食べさせてやってくださいよ。

つか:食べさせてるよ! 昔、ある芝居をやったとき、その劇場の重役会議で、俺が焼き肉を四百万食ったというんで問題になったらしいんだよ。

林:四百万!

つか:四十人ぐらいの出演者を、週に一回ぐらいは連れて行ったよ。だけど、そんなに食えるわけないだろう。おまえ、四百万っていったら腹のポチャポチャしたウシを四頭は食わなきゃいかんぞ。食えるか、四頭。俺の芝居、客が入るじゃないか。ほかの入らない芝居の領収証を全部俺のところに持ってきたんじゃないかと言ったんだけど、恥ずかしかったよ。

林:でもみんなでビール飲んで、ごはん食べるからこそ、特別の感情が生まれちゃうんですよね。

つか:そうなんだよね。最近、アカンと思ったのは、みんなテレビで売れて、車で来るようになってきたら、飲めないから、芝居終わるとそのまま帰っちゃう。ほんとの芝居の熱みたいなものは、飲んでベチャベチャしゃべったりして生まれるんだよね。

週刊朝日  2020年5月8‐15日合併号